「サバ缶は添加物まみれ」だと思って避けていました|栄養と健康効果を調べてわかったこと

栄養
サバ缶のイラスト
缶詰は保存が効く食品なので、僕はずっと添加物まみれだと思っていました。 長く日持ちするのは、何か特別なものを加えているからに違いない、という思い込みです。 だから健康のために魚を摂ろうと考えても、サバ缶という選択肢は最初から外していました。 ところが調べてみると、その思い込みは大きく外れていました。 サバの水煮缶の原材料は、さばと食塩だけが基本です。 保存料は入っていません。 加工食品の中ではむしろ、原材料がかなりシンプルな部類に入ります。 この記事では、サバ缶がなぜ保存料なしで日持ちするのか、栄養面で何が優れているのか、逆にどこを気をつければいいのかを、調べた範囲でまとめます。

サバ缶はもともとどういう食べ物だったのか振り返ります

日本でサバ缶を売り始めたときのレトロ風のイラスト

缶詰そのものは、19世紀の初めにフランスで生まれました。
1804年、戦争のたびに食糧の保存へ悩まされていたナポレオンが、よい保存方法を募る懸賞を出します。
これに応えて、ニコラ・アペールという人物が、ガラス瓶に食品を詰めて密封し加熱する方法を考案しました。
これが缶詰の原型になります。
その後アメリカで缶詰の生産が広がり、1861年に始まった南北戦争では軍用食として一気に普及しました。

日本へ入ってきたのは明治時代です。
フィラデルフィアの万国博覧会へ派遣された水産関係の官僚が缶詰の価値に注目し、現地で製造法を学んで持ち帰りました。
日本で最初の缶詰工場は北海道の石狩に作られ、1877年(明治10年)にサケの缶詰が製造されています。

サバについては、福井県の若狭から京都までサバを運んだ道が「鯖街道」と呼ばれていたほど、古くから親しまれてきた魚です。
サバ缶として本格的に広まったのは戦後で、昭和30年代には大洋漁業(今のマルハニチロ)が水煮缶を海外へ輸出していた記録が残っています。

長いあいだサバ缶は、保存食や酒のつまみという地味な位置づけでした。
流れが変わったのは2013年です。
テレビ番組でサバ缶のダイエット効果が紹介され、店頭から消えるほどの人気になりました。
その後も、おしゃれなレシピとして洋食に使われたり、コロナ禍の巣ごもりで保存食として見直されたりと、何度かブームを重ねています。
2016年には、サバ缶の生産量がツナ缶を追い抜きました。

僕がサバ缶を避けていたのは、ちょうどこの「保存食・つまみ」という古いイメージと、添加物への思い込みが重なっていたからでした。

「缶詰は添加物まみれ」という思い込みが解けました

缶詰に保存料がそもそも要らない理由があります

缶詰が長く日持ちするのは、保存料のおかげではありません。
製造の工程そのものに理由があります。
サバ缶は中身を詰めて密封したあと、115度から121度ほどの高温で、数十分の加熱殺菌をかけます。
この処理で、食中毒の原因になる菌を、実用上安全なレベルまで死滅させます。
熱に強いことで知られるボツリヌス菌の芽胞にも対応できる強さです。

そのうえで缶を真空に近い状態で密封するので、あとから菌が入り込む隙もありません。
菌が生きられず、新たに入ってもこない状態なので、保存料を加える理由がそもそもないわけです。
日持ちのしくみが保存料ではなく加熱と密封にある、というところが、僕の思い込みとは違っていました。

水煮缶の原材料は「さば・食塩」だけが基本です

実際に原材料の表示を見てみると、サバの水煮缶は「さば、食塩」とだけ書かれているものが多いです。
味付けのために調味料(アミノ酸等)が加わることはありますが、それでも構成はかなりシンプルです。
保存食と聞いて身構えていた割に、入っているものは少なかったわけです。

HOKOのサバ缶、食塩不使用の写真
HOKOのサバ缶、食塩ありの写真

サバ缶の栄養価を具体的に見ていきます

ここからは、サバ缶にどんな栄養が含まれているのかを具体的に見ていきます。
「安くて栄養がある」と言われる理由が、数字を並べるとはっきりします。

EPA・DHAは生魚より効率よく摂れます

サバには、青魚に多いEPAとDHAという脂が豊富に含まれています。
これらが体にどう働くかは前回のEPA・DHAサプリメントの記事で詳しく書いたので、ここではサバ缶という形で摂る意味に絞ります。

注目したいのは、サバ缶のほうが生のサバを調理するより効率よくEPA・DHAを摂れる場合がある、という点です。
EPAやDHAは加熱で一部が失われますが、缶詰は密封したまま加熱するので、溶け出した脂も缶の中に留まります。
汁にも栄養が逃げているので、汁ごと使えば無駄になりません。

カルシウムが生サバの約30倍あります

サバ缶で意外だったのが、カルシウムの多さです。
生のサバ100gにはカルシウムが9mgほどしか含まれていませんが、水煮缶では260mgと、約30倍になります。
商品によって幅はありますが、骨ごと食べられるぶん、生の状態より大きく増えます。

理由は、缶詰を作るときの加熱にあります。
高温で長時間煮ることで、サバの骨までやわらかくなり、骨ごと食べられるようになります。
骨に多いカルシウムをそのまま摂れるので、含有量が跳ね上がるわけです。
カルシウムは日本人に不足しがちな栄養素なので、これを手軽に補えるのはありがたいところです。

ビタミンDとビタミンB12も手軽に補えます

サバ缶にはビタミンDも多く含まれています。
100gあたり11μgほどで、成人の1日の目安量である8.5μgを上回ります。
ビタミンDは骨の健康や免疫の働きに関わる栄養素で、不足しがちな人も少なくありません。

ビタミンB12も豊富です。
神経の働きや赤血球を作るのに欠かせない栄養素で、半分の缶でほぼ1日分を摂れます。
このほかビタミンB1やB2なども含まれていて、サバ缶はビタミン類の供給源としても役立ちます。

ただしサバ缶だけでは栄養が完結しません

サバ缶を中心に、バランスの良い食材のイラスト

ここまで栄養の多さを並べてきましたが、サバ缶は単体で完全な食品というわけではありません。
ビタミンC、β-カロテン、食物繊維はほとんど含まれていないからです。

そのため、サバ缶だけで食事を済ませようとすると栄養が偏ります。
野菜やきのこ、海藻、豆腐や納豆といった食材と組み合わせて、足りない栄養を補うことが前提になります。
玉ねぎやネギと合わせると、EPA・DHAの働きを助けるとも言われています。
サバ缶は主役というより、栄養バランスを底上げする一品として考えるのが現実的です。

体にいいからこそ食べ過ぎに気をつけます

栄養が豊富なサバ缶ですが、たくさん食べればいいというものではありません。
むしろ食べ過ぎると体の負担になる面もあります。

塩分とプリン体と脂質に気をつけます

まず塩分です。
一般的なサバ水煮缶には、1缶あたり1.7gから1.8gほどの塩分が含まれています。
味付けタイプならもっと増えます。
1日の塩分摂取の目安からすると、缶詰だけでそれなりの割合を占めるので、高血圧などで塩分を控えたい人は注意が必要です。
食塩不使用なら1缶あたりの塩分は0.2gから0.4gほどで、ぐっと少なくなります。

次にプリン体です。
サバはプリン体が比較的多い魚です。
痛風や高尿酸血症のある人は、プリン体の摂り過ぎに注意が必要で、毎日大量に食べ続けるのは避けたほうがよいとされています。

脂質も見落とせません。
EPA・DHAが体にいいとはいえ、それはサバの脂全体の2割ほどで、残りは一般的な脂質です。
1缶でおよそ20gの脂質があり、カロリーも決して低くありません。
良い脂だからと安心して食べ過ぎると、カロリーの摂り過ぎにつながります。

これらをふまえると、明確な上限があるわけではありませんが、塩分や脂質を考えると、食べ過ぎない範囲にとどめるのが現実的です。
僕は1日1缶を半分にして、量を抑えるようにしています。

水銀は一般的な食べ方なら心配しすぎなくてよさそうです

魚を多く食べるとなると、水銀が気になる人もいるかもしれません。
マグロなどで水銀の話を聞いたことがある人もいると思います。
ただ、サバについては、一般的な食べ方であれば過度に心配しなくてよさそうです。

水銀は、食物連鎖の上位にいる大型の魚ほど溜まりやすい性質があります。
サバは小型から中型の魚で、食物連鎖の上のほうにはいないので、水銀の蓄積は少なめです。
厚生労働省も、サバを一般的に問題のない魚として扱っています。
注意が必要なのはキンメダイやクロマグロ、メカジキといった大型・深海の魚で、サバはそこには当てはまりません。

BPAや加工でんぷんも過度に怖がらなくてよさそうです

缶詰についてもうひとつ聞くのが、BPA(ビスフェノールA)の話です。
缶の内側の塗装に使われてきた物質で、体の中で女性ホルモンに似た働きをする可能性が指摘されてきました。

ただ、現状では過度に怖がる必要はなさそうです。
日本の製缶業界は、法律の基準よりはるかに低い自主基準を設けています。
大手メーカーはBPAを減らした塗装や、樹脂フィルムを使った缶への切り替えを進めています。
通常の食べ方であれば、現実的なリスクは低いとされています。
ただし妊婦や乳幼児については一部で注意が呼びかけられているので、缶詰中心の食生活に偏らないようにする配慮はあってよいかもしれません。

もうひとつ、加工でんぷんという増粘剤が、味付けタイプやみそ煮タイプの一部に使われていることがあります。
食感を保つためのものですが、成分の中身が表示からはわかりにくいという指摘もあります。
気になる場合は、原材料に加工でんぷんの表示がない水煮缶を選べば避けられます。

サバ缶はこう選ぶと失敗しません

サバ缶は種類が多く、店頭で迷います。いくつか基準を持っておくと選びやすくなります。

基本は水煮缶を選びます

サバ缶には大きく分けて、水煮、みそ煮、醤油・味付けの3種類があります。
このうち、まず選びたいのは水煮缶です。

水煮缶は余計な味付けがないぶん、料理に使いやすく、何にでも合わせられます。
塩分や糖質も味付けタイプより少なめです。
みそ煮や醤油煮は、そのまま食べる分にはおいしいのですが、塩分や糖質が増え、料理にアレンジしにくくなります。
健康面と使い勝手の両方を考えると、水煮缶を基本にするのが扱いやすいです。

水煮缶の中にも、食塩を使ったものと食塩不使用のものがあります。
僕は、疲れてご飯をたくさん食べたい日は食塩入りを、ふだんは食塩不使用を選んでいます。
食塩不使用でもご飯にはよく合います。

汁には栄養と塩分の両方があります

サバ缶の汁を捨てるかどうかで迷う人は多いです。
栄養面では、汁にも価値があります。サバから溶け出したEPA・DHAやビタミンB群、ミネラルが汁に溶け込んでいるからです。
スープやみそ汁、炊き込みご飯のように、汁ごと使える料理なら栄養を無駄にしません。

ただし、汁には塩分も多く溶けています。
塩分を控えたい場合は、汁を少なめにするか、調味料を減らして調整するとよいです。
食塩不使用の缶であれば、汁まで気兼ねなく使えます。

サバ缶との付き合い方をまとめます

缶詰は添加物まみれだという思い込みから、僕はずっとサバ缶を避けてきました。
調べてみると、その日持ちは保存料ではなく加熱と密封によるもので、水煮缶の原材料はさばと食塩だけが基本でした。

栄養面では、EPA・DHAを生魚より効率よく摂れること、カルシウムが生サバの30倍近くあること、ビタミンDやB12も豊富なことがわかりました。
その一方で、塩分やプリン体、脂質の摂り過ぎには気をつける必要があり、週に2〜3回、1日1缶までが無難な目安になります。
選ぶなら水煮缶を基本に、塩分が気になるなら食塩不使用も選べます。

サバ缶は常温で長く保存でき、調理もいらず、栄養も摂れる食材です。
日常的に食べては買い足していけば、家に常にいくつか残るので、いざというときの備えにもなります。
避けていた食材がひとつ食卓に加わることになり、悪くない変化だと感じています。

参考文献

  • 文部科学省 科学技術・学術審議会資源調査分科会 2020
  • 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
  • 厚生労働省 2020
  • 日本人の食事摂取基準(2020年版)
  • 厚生労働省 2010
  • 妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項

感想やコメントをいただけるとうれしいです。