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ミスターワッフルのシナモンワッフルがとてもおいしくて、ふと「そもそもシナモンって何なんだろう?」と思いました。
名前はずっと前から知っているし、香りもすぐ思い浮かぶ。
なのに、どんな植物で、何からできているのかと聞かれると、うまく答えられません。
調べてみると、シナモンはクスノキ科の常緑樹から作られるスパイスでした。
木の幹や枝から皮をはいで、薄い内側の部分だけを取り出し、くるくる巻いて乾燥させる。あのスティック状の形は、樹皮そのものの姿だったわけです。
それを粉に挽いたものが、シナモンパウダーになります。

植物としての正体がわかったところで、次に気になったのは「シナモンにもいろいろ種類があるらしい」ということでした。
市販の「シナモン」には、大きく分けて2つの種類があります。セイロンシナモンと、カシアシナモンです。

セイロンシナモンは、その名の通りスリランカ(旧国名が「セイロン」)を主な産地とするシナモンです。
学名は Cinnamomum verum、ラテン語で「真のシナモン」という意味がつけられています。
スティックを見ると、薄い樹皮が何層にも重なって巻かれていて、色はやや明るめのベージュから黄土色。香りは甘く、やわらかく、上品な印象です。
一方のカシアシナモンは、中国、ベトナム、インドネシアなどで広く栽培されています。
こちらは樹皮が厚く、スティックは一枚の皮をぐるっと巻いたような見た目をしています。
色は濃い茶色から赤茶色で、香りも力強く、スパイシーで、少し辛味を感じることもあります。
見た目も香りもかなり違う2つのシナモンですが、健康という視点で見たときに一番大事なのは、クマリンという成分の含有量の差です。
クマリンは、シナモンに含まれる香り成分の一種です。
防腐剤や香料としても使われる物質ですが、長期間にわたって多量にとり続けると、肝臓に負担をかける可能性が指摘されています。
そして、このクマリンの量が、セイロンとカシアで大きく違います。
セイロンシナモンにはクマリンがごく少量しか含まれておらず、検出されないか、かなり低いレベルにとどまります。
一方、カシアシナモンには、セイロンの数十倍にあたるクマリンが含まれていることが珍しくありません。
たまにシナモンロールを食べるくらいなら、どちらでもまず気にする必要はありません。
ただ、健康目的で毎日2〜3gを続けるような使い方をするなら、話は変わってきます。
そうした習慣的な摂取を前提にするなら、クマリンの少ないセイロンシナモンを選んでおく方が安心です。
シナモンの健康面での働きは、いくつかの成分が関わり合うことで生まれています。
まず、シナモンらしい香りの中心にあるのがシンナムアルデヒドという成分です。あの甘くてスパイシーな香りのもとになっている物質で、血流のサポートや、抗炎症、抗菌といった作用が報告されています。
次に、ポリフェノール。中でもプロアントシアニジンと呼ばれるタイプが多く、強い抗酸化作用を持っています。
体内で発生する活性酸素によるダメージを抑える方向に働く成分です。
さらに、オイゲノールなどの精油成分も含まれていて、こちらは血行促進や抗菌・防腐の文脈で名前が出てくることが多い成分です。
このほか、カルシウムや鉄といったミネラル、食物繊維も含まれますが、1日にとる量を考えると、シナモンでミネラルを補給するというよりは、あくまで香りと機能性が主役です。
こうした成分が組み合わさることで、シナモンは血糖値、脂質、炎症、血管といった複数の領域に影響を及ぼす可能性がある。次のセクションからは、それぞれの領域で何がわかっているのかを見ていきます。
シナモンの健康効果として、一番多く研究されているのが血糖値のコントロールです。作用の仕組みとしては、大きく2つの方向が報告されています。
ひとつは、インスリンの効きやすさを高めるという方向です。
インスリンは、血液中の糖を細胞に取り込ませるためのホルモンですが、その効きが悪くなると、糖がうまく取り込まれず、血糖値が高いまま残ってしまいます。シナモンの成分は、細胞がインスリンに反応しやすい状態を助けることで、この取り込みをスムーズにする可能性があるとされています。
もうひとつは、食後の血糖値の上昇をゆるやかにするという方向です。
こちらは、糖を分解する消化酵素の働きを少しゆるめることで、食べたものが一気に血糖値を押し上げるのを抑えるという仕組みです。
インスリンの話が「取り込む側」の改善だとすれば、こちらは「入ってくる側」のスピードを落とすイメージです。
実際に人を対象にした試験では、1日あたり1〜6g程度のシナモンを数週間から数か月とったときに、空腹時血糖が下がった、HbA1c(長期的な血糖コントロールの指標)が改善した、インスリン抵抗性の数値が良くなった、といった結果が報告されています。
ただし、あまり変化が見られなかった試験もあり、「シナモンをとれば必ず血糖値が下がる」とまでは言えないのが現状です。
位置づけとしては、シナモン単体で血糖値を劇的に変えるものというよりは、食事の内容や運動と組み合わせたときに力を発揮するサポート役、くらいに考えておくのが現実的だと思います。
シナモンの作用は、血糖値だけにとどまりません。脂質や血圧に対しても、似たような方向の影響が報告されています。
複数の試験をまとめてみると、シナモンを摂取したグループでは、総コレステロール、LDLコレステロール(いわゆる悪玉)、中性脂肪が下がりやすい傾向が見られています。逆に、HDLコレステロール(善玉)は増える方向に動いたという報告もあります。また、血圧についても、収縮期・拡張期ともに数mmHg程度の低下が見られたデータがあります。
もちろん、薬のように強く速く効くわけではありません。ただ、体重管理や減塩、運動習慣といった日々の積み重ねと合わせて考えると、長期的には小さなプラスを上乗せしてくれる存在になり得ます。
血糖値、脂質、血圧。ここまで見てきたのは、いずれも数値として測れる領域の話でした。次は、もう少し体の土台に近い部分、「抗酸化」と「炎症」の話に入ります。
ここまでは、血糖値や脂質、血圧といった「検査で数字に出る領域」の話でした。ここからは、もう少し体の奥で起きていることに目を向けてみます。
我々の体では、日常的に活性酸素が発生しています。
呼吸をするだけでも、食事をしても、紫外線を浴びても生まれるもので、それ自体は避けられません。
問題は、この活性酸素が過剰になると、細胞を傷つけてしまうことです。
体にはもともとそれを処理する仕組みがありますが、加齢やストレス、生活習慣の乱れで処理が追いつかなくなると、ダメージが蓄積していきます。
シナモンに豊富に含まれるポリフェノールは、この活性酸素を抑える方向に働く成分です。
実際、スパイスの中でもシナモンの抗酸化力はかなり高い部類に入ります。
そしてもうひとつ、活性酸素と深く結びついているのが「慢性炎症」です。
炎症というと、傷口が赤く腫れるようなイメージがあるかもしれませんが、ここで言う慢性炎症は、自覚症状がほとんどないまま体の中で静かに続く、低いレベルの炎症のことです。
この慢性炎症は、動脈硬化、糖尿病、一部のがん、認知症など、さまざまな疾患の土台になると考えられています。
シナモンの摂取によって、炎症の指標であるCRP(C反応性タンパク)が下がったという試験結果もあり、この慢性炎症を少し抑える可能性が示されています。
劇的に何かを治すという話ではありません。
ただ、毎日の食事の中に抗酸化・抗炎症の方向に働く食品を少し足しておくことは、長い目で見たときのリスク管理として理にかなっています。
抗酸化や抗炎症の話は、体の中で静かに進む変化でした。
一方で、シナモンにはもう少し体感に近い領域、つまり「血の巡り」に関わる働きも昔から知られています。
漢方の世界では、シナモンは「桂皮(けいひ)」という名前で古くから使われてきました。
体をあたため、血行を良くする目的で処方に組み込まれてきた歴史があります。
冷え、肩こり、月経痛など、いわゆる「血流が滞りやすい状態」との相性が良いとされてきたスパイスです。
現代の研究でも、シナモンの成分が毛細血管の機能をサポートする可能性が報告されています。
ただし、この領域はまだ研究の途上にあり、漢方での長い使用歴に比べると、科学的なエビデンスはこれから積み上がっていく段階です。
とはいえ、「昔から経験的に使われてきた」ということ自体に、一定の意味はあると思います。
科学がまだ追いついていないだけで、体感として血行が良くなると感じてきた人が長い歴史の中で大勢いた。その事実は、完全に無視するには重すぎます。
「血行をサポートするスパイス」という捉え方で頭の片隅に置いておくと、シナモンの全体像が整理しやすくなるはずです。
ここまで見てきた血糖値、脂質、抗酸化、血行といった領域のほかにも、シナモンの成分に関する研究は広がりを見せています。
たとえば、アルツハイマー病やパーキンソン病に関わる異常なタンパク質の蓄積を、シナモンの成分が抑えるという報告があります。
また、シナモンの精油が一部の細菌やカビ、ウイルスの増殖を抑えたという実験結果も出ています。
ただし、これらは主に細胞実験や動物実験で得られた結果です。
人の体の中で同じことが起きるのか、起きるとしてどの程度の意味があるのかは、まだはっきりしていません。
興味深い方向性ではありますが、現時点では「そういう研究も進んでいる」という程度にとどめておくのが正直なところです。
さて、ここまではシナモンの「良い面」を中心に見てきました。ただ、毎日とり続けるなら、安全性の話も避けて通れません。
シナモンを健康目的で毎日とり続けるなら、「どれくらいまでなら安心か」を知っておくことも大事です。
まず基本になるのは、前半で触れたクマリンの話です。欧州食品安全機関(EFSA)が設定しているクマリンの耐容一日摂取量は、体重1kgあたり0.1mg。体重60kgの人なら、1日6mgまでが目安ということになります。
セイロンシナモンはクマリンの含有量がごく少ないため、通常の使い方であればこの基準を超える心配はほとんどありません。
実用的な量の目安としては、セイロンシナモンなら1日2〜3g程度、小さめのスプーン1杯前後が健康目的として妥当な範囲です。カシアシナモンの場合は、クマリンが多い分だけ慎重になる必要があり、毎日とるなら1g前後までにとどめるか、いっそ「たまに楽しむ」くらいの使い方にしておいた方が無難です。
また、妊娠中の方、肝臓に持病のある方、抗凝固薬など特定の薬を飲んでいる方は、サプリメントのようにまとまった量をとるのは避けた方がいいです。
気になる場合は、医師に相談するのが一番確実です。
ここまでで、シナモンの成分、期待できる作用、そして安全に使うための目安が出そろいました。
最後に、これらを踏まえて実際に僕がどう食べているかを書いてみます。
ここまでの話を踏まえて、自分がどうシナモンを取り入れているかを書いてみます。
あくまで一例ですが、何かの参考になればうれしいです。
セイロンシナモンを買おうと決めて調べ始めると、「グレード」という概念があることを知りました。
セイロンシナモンには、スティックの太さや見た目によって等級が分かれていて、代表的なものだけでもAlba、C5 Special、C4、C3、M5といった区分があります。
上に行くほどスティックが細く、色が明るく、香りが繊細で、値段も高くなります。
健康成分の量がグレードに比例するわけではないので、健康目的だけで言えばどのグレードでも構いません。
ただ、せっかく毎日とるなら香りも楽しみたいと思い、最終的にSpice Upの有機セイロンシナモン、Albaグレードを選びました。


セイロンであること、有機であること、Amazonでの評価、そしてせっかくなら一番上のグレードを試してみたいという気持ち。
決め手はそのあたりのバランスです。
シナモンを手に入れてから、いくつかの食べ方を試しました。
最初に試したのは、無糖ヨーグルトに混ぜる方法です。
健康的な組み合わせに思えたのですが、実際にやってみると、シナモンの香りとヨーグルトの酸味がぶつかって、かなり酸っぱく感じました。
相性が悪いというほどではないかもしれませんが、自分の好みには合わなかったので、この組み合わせは早々にやめています。
次に試したのが、コーヒーに入れる方法です。
香りの相性は良くて、シナモンの甘い香りがコーヒーにふわっと乗る感じは悪くありません。
ただ、シナモンパウダーはコーヒーに溶けません。
飲み進めるうちにカップの底にたまっていって、最後にそれを一気に飲むことになります。
これがなかなかきつい。
表面に軽く振って香りだけ楽しむ、くらいの使い方なら良いのですが、2〜3gをしっかりとりたい場合には向かない方法でした。
最終的に落ち着いたのが、冷たい牛乳に混ぜる方法です。
これが思いのほか良くて、シナモンのツンとした感じがほとんど消えて、とてもまろやかになります。
ほんのりシナモンが香る程度の飲みやすさで、これなら毎日続けられそうだと感じました。

ひとつだけコツがあるとすれば、混ぜる順番です。コップに牛乳をたっぷり入れてからシナモンパウダーを振ると、粉が舞いやすく、目に入ると地味に痛い。なので、先に少量の牛乳をコップに入れて、シナモンを加えてよく混ぜてから、残りの牛乳を注ぐ。この順番にすると、粉が舞わず、混ざりもいいです。
量は、小さめのスプーン1杯弱、2〜3g程度を1日の上限にしています。
シナモンについて調べてみて感じたのは、思っていたよりずっと奥が深いスパイスだったということです。
血糖値やコレステロールへの作用、抗酸化・抗炎症の働き、血行のサポート。
どれも「これさえとれば解決する」というものではありませんが、毎日の食事に少し足しておくことで、長期的な健康のサポートになり得るだけの根拠は揃っています。
実際に取り入れるうえで押さえておきたいのは、セイロンシナモンを選ぶことと、1日2〜3g程度におさえること。
この2点だけです。
そして、続けるために大事なのは、自分に合った食べ方を見つけることだと思います。
僕の場合は、ヨーグルトやコーヒーを試したうえで、冷たい牛乳に混ぜるのが一番しっくりきました。
トースト、バナナ、ココアなど、合いそうな組み合わせはほかにもたくさんあるので、自分にとって負担なく続けられる形を探してみてください。
シナモンワッフルのおいしさがきっかけで始まった調べものでしたが、思いがけず面白い旅になりました。
この記事を書くにあたり、以下の情報源を参考にしました。
∙ KURUNDU「シナモンの成分”クマリン”について」(東京都の調査データを含む)
https://kurundu.jp/news/coumarin/
∙ 食品安全委員会「食品安全関係情報詳細」(クマリンの耐容一日摂取量)
https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu03690070314
∙ Healthline “10 Evidence-Based Health Benefits of Cinnamon”
https://www.healthline.com/nutrition/10-proven-benefits-of-cinnamon
∙ 小川糖尿病内科クリニック「健康講座 シナモンの効能」
https://ogawa-dm.com/2023/04/291.html
∙ 養命酒製造「シナモンの効果・効能とは?」
https://www.yomeishu.co.jp/health/3919/
∙ VOXSPICE「違いを知れば楽しみ方も変わる!2つのシナモン」
https://voxspice.jp/spicestory/3984